血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドラインについて
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日本透析医学会雑誌 44巻 5号 2011 −
1.はじめに
日本透析医学会から2011年心血管合併症に関わるガイドラインが出された。苦心の作であることは、その序に記述されている。
これからの課題も多々含まれているようです。
私自身の為の覚書ではあります。上記ガイドラインは、既に発表されて8年が経過していますので、透析に関わる方々は、当然
熟知されている事柄と推察いたします。
透析スタッフの方々は、透析患者個々の日常のデータについて、患者に常時接してみえますから透析医より詳しい筈。病院まか
せの透析患者の多い現状では、透析患者の予後は、透析スタッフの内在する透析に関わる知識に依存しているといっても過言で
はないでしょうか。責任は重大かと。
Drへの患者に関わる有用な情報の提供は、ひとえにスタッフ自身の透析に関わる知識に依存しているからに他ならないでしょう。
透析スタッフの責任を軽くするには、患者自身が、透析に関わる知識を豊かにするしかないでしょう。患者とスタッフは、ヒフティ・
ヒフティの関係にするのがお互いの為でもありましょうか。やや僭越な書き方かと。
透析医Drの方は、僭越ですが、院内にデータ処理を専門に扱う透析スタッフを置かれますように!患者に掛かりきりのスタッフに
は、その余裕は、無いのが現状ではないかと。(私が通院する施設は特にそのように思います。)
「血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン」の内容を知っているのと知らないとでは、知っていた方
がよりベターかと思い記述することにしました。
2.脂質異常症について
透析患者においても,脂質異常症は心血管疾患,特に心筋梗塞発症の独立した危険因子である。
{ 日本腎臓学会の「エビデンスに基づくCKD
診療ガイドライン2009」では,目標LDL-Cを120 mg/dL以下(可能なら100 mg/dL
以下)
に設定している.これはCKD
患者を一次予防高リスク群または二次予防群に相当すると考え,日本動脈硬化学会のガイドラインに当て
はめた値で,特に透析患者を対象にしたものではない.
わが国の透析患者の観察的コホート研究で,Non-HDL-C低値群(<100
mg/dL)に比較して高値群(≧130
mg/dL)では,心血管死
亡リスクが有意に高く,相対リスクは3.62(95%信頼区間1.24-10.56)と報告されている.これらの観察研究の結果を参考にして,本ガイド
ラインでは,成人血液透析患者における虚血性心疾患の予防において,一次予防ではLDL-C
120 mg/dL 未満,あるいはNon-HDL-C
150 mg/dL未満,二次予防ではLDL-C 100
mg/dL未満,あるいはNon-HDL-C 130 mg/dL
未満を管理目標とすることを提案する。}
と。
*
Non-HDL-C=TC(総コレステロール)−HDL−C(善玉コレステロール)で示される数値。
Non-HDL-Cとは、上記ガイドラインで提示された指標で、「すべての動脈硬化惹起性リポ蛋白中のコレステロールを表します。LDL
(悪玉コレステロール)だけでなく、TG(中性脂肪)リッチなリポ蛋白であるカイロミクロン(CM)やVLDL、脂質代謝異常により出現する
レムナントなどを含み、動脈硬化のリスクを総合的に管理できる指標です。」 と。 (「 」内の引用は、下記 URLからであります。
http://www.kyowamx.co.jp/pdf/lipid/info18_lipid.pdf )
ちなみに私の平成29年4月24日(月)の血液検査からの数値は、TG 87mg/dL
HDL−C 66mg/gL
LDL−C 75mg/dL
TC 158mg/dL
でありました。
上記の式にあてはめれば、Non-HDL-C=158−66=92 Non-HDL-C=92mg/dL。かろうじて(<100mg/dL)群にいるようです。
今のところ心血管死亡リスク(特に心筋梗塞発症リスク)は、低いと思われます。あくまでデータ上の事柄
直近の数値では、平成30年2月26日(月)の血液検査では、TG(中性脂肪)81mg/dL HDL−C 73mg/dL LDL−C 80mg/
dL
TC 167mg/dLでした。Non−HDL−C=167−73=93mg/dLであり、現在もかろうじて(<100mg/dL)群でありました。*
透析患者の虚血性心疾患予防のためには,一般住民と同様にLDL-C
あるいはNon-HDL-Cを低下させることが有効であると考えられ,こ
の際,低栄養にならないように注意することが重要と考えられる.
3.動脈硬化について
1.透析患者の心血管死亡リスク評価のためには,古典的危険因子に加え,腎不全特有の危険因子(貧血,炎症・低栄養,ミネラル
代謝異常など)も含めるべきである.
*
古典的危険因子とは、「高齢・男性・高血圧・LDL コレステロール高値・HDL
コレステロール低値・糖尿病・喫煙・運動不足・閉経
心血管疾患家族歴・左心肥大」を言う。*
2.心血管リスク評価に,動脈壁肥厚度,動脈壁硬化度,血管石灰化なども利用する(委員会意見)
* 動脈硬化・血管石灰化の臨床的評価方法
評価内容 評価項目
測定方法
動脈壁肥厚 頸動脈内膜中膜厚(IMT),プラーク 超音波Bモード
動脈壁硬化 脈波速度(cfPWV,hfPWV,baPWV)
脈波解析
CAVI,Augmentation
index(AI)
〃
コンプライアンス,Stiffness parameterb など
超音波変位法
動脈石灰化
石灰化有無,石灰化半定量化
単純X線撮影
大動脈石灰化指数(ACI)
単純CT
冠動脈石灰化スコア
EBCT,MDCT
血管内腔狭窄 狭窄の有無,病変枝数,Gensini
score
造影CT,冠動脈造影
心筋虚血
ST-T変化
心電図
虚血部位,冠血流予備能
心筋シンチ(SPECT)
*
動脈壁肥厚,動脈壁硬化,動脈石灰化は,動脈硬化による動脈壁自身の変化を表すのに対し,血管内腔狭窄や
心筋虚血は動脈硬化の結果生じる変化であることに注意
透析患者では,虚血性心疾患・脳血管障害・心不全などの心血管疾患(CVD)による死亡リスクが著しく高く,健常者と比較した相対リ
スクは10〜30 倍と示されている。CVD
リスクの上昇は透析導入前から認められ,慢性腎臓病(CKD)のステージが高いほど段階的に
上昇する。
透析患者では,CVD
イベント発症リスクが高く,また発症後の生存率が低い(致死率が高い)ことが特徴である.透析患者における急
性心筋梗塞発症リスクは,健常者に比較して2〜5倍高く,急性心筋梗塞後の生存曲線も透析患者で不良である。脳血管障害について
も同様であり,高い発症率と高い致死率が相乗的にCVD
死亡リスクを高めているものと考えられる。
透析患者でCVD
リスクが高い原因のひとつとして、動脈硬化促進因子と腎障害促進因子とは共通したものが多く,慢性腎臓病(CKD)
のステージが進展した患者ほど動脈硬化も高度になる。透析導入時には約半数の患者に有意な冠動脈狭窄が認められ,透析導入時
の冠動脈疾患の有無は,透析導入後の心血管イベントの強力な予測因子である。
*
私は、透析導入前に冠動脈狭窄を調べる造影CT,冠動脈造影をしておりませんが、無かったのではないかと推測しておりますが、
透析導入1・2年目頃の腹部MRI検査を受けた時には、既に大動脈から分岐する腎動脈付近に、更に腎動脈が腎臓へ入る付近に
血管石灰化の陰影が確認されている。いつ頃発症したかは不明です。
動脈硬化の進捗は、現在のところ年齢相応(70歳前後)でありましょうか。*
血管石灰化が高度で高頻度に認められることも,透析患者の大きな特徴である.血管石灰化は,粥状動脈硬化巣の内膜石灰化とメ
ンケベルグ型中膜石灰化とに大別され,後者の頻度が透析患者で特に高い.この背景には,尿毒症という環境に加えて,高カルシウム
(Ca)血症と高リン(P)血症が石灰化促進因子として作用することが考えられている。
* とすれば、私の血管石灰化の兆候は、透析導入近辺にあるのではなかろうか。
腎動脈の石灰化は、その頃の発症であろうか。
拙稿 血管石灰化の機序 も合わせて参照下さい。
*
大動脈石灰沈着の面積を,大動脈石灰化指数(aortic
calcificationindex:ACI)で表して評価することが可能である.透析患者において,
ACI
と冠動脈石灰化は強く相関する。胸部・腹部単純X線撮影による血管石灰化の有無も,総死亡・CVD
死亡の独立した予測因子となる
ことが透析患者でも示されており,日常診療に応用できる方法と考えられる。
これらの非侵襲的な代替指標の評価は,CVD
危険因子の管理の参考になる可能性があるものの,判断基準値や適切な測定頻度につ
いては確立されていない。
大動脈石灰化は透析歴と正相関する。一方,冠動脈石灰化,頸動脈IMTや大動脈PWVは透析歴と有意な相関がないとの報告もあり,透
析患者における経年的変化は明らかではない。
CVDに関わる各危険因子についての抑制法以外には、喫煙習慣の中止,個々の患者での適切な強度の運動の励行などの生活習慣の
改善が大切であり,何よりも心血管疾患(CVD)
の早期発見,および可能であれば早期の治療が,透析患者においては重要と考えられる。
4.高血圧(血圧異常)
1.透析患者における血圧は,透析室における血圧のみならず家庭血圧を含めて評価すべきである。
2.心機能低下がない,安定した慢性維持透析患者における降圧目標値は,週初めの透析前血圧で140
/90mmHg
未満とする(オピニオン)
3.目標血圧の達成にはドライウェイト(DW)の適正な設定が最も重要である。
4.DW
の達成/維持後も降圧が不十分な場合に降圧薬を投与する。
透析患者で,昼間135/85 mmHg
未満,夜間120/80mmHg
未満を目標とすべしとの報告があり,これらを参考にすれば,透析中の血圧低下,
過度な起立性低血圧がない限り,透析開始時の収縮期血圧140
mmHg未満,拡張期血圧90 mmHg
未満は受け入れ可能な値と考えられる。
そのほかの報告としては,透析前収縮期血圧160 mmHg
以下にすれば予後が良いという報告や,家庭血圧を用いた週平均化血圧(WAB)の
前向き検討などで透析前血圧がおよそ140/90mmHg
が妥当との報告も,140/90 mmHg
を支持する報告である.同様に,透析室ではなく家庭
血圧を用いた収縮期血圧で125〜145 mmHg
が最も透析患者の予後が良いとの報告がある。最近報告されたメタアナリシスでは,1,679人を含む
8報の報告から,降圧薬(アンジオテンシンU受容体拮抗薬,カルシウム拮抗薬,b
遮断薬)によって,収縮期血圧を4.5 mmHg,拡張期血圧を2.3
mmHg 低下させることにより心血管障害発生のrisk
reduction(RR)が0.71(95% CI:0.55-0.0.92,P=0.009),全死亡ではRR
0.80(95%CI:0.66-0
.96,P=0.014),心血管障害死はRR 0.71(95%
CI:0.50-0.99,P=0.044)との結果であった.
このことから,透析患者の薬物による積極的降圧は心血管障害を予防する上で当然考慮されるべきで,粗死亡率10%とすると100
人・年あた
り透析患者の10 人の死亡のうち2
人の死亡を減らせると結論している.
日本透析医学会の調査でも降圧薬使用群が透析前の血圧値によらず生命予後が良好であり,降圧薬自体の効果も示唆される。ただし,透析
中の急激な血圧低下(収縮期血圧30 mmHg
以上)や透析終了後の起立性低血圧は予後不良との報告があるので今後の検討も必要である。
・ 疫学的見地から
健常者において高血圧の持続は左室肥大,虚血性心疾患,心不全および死亡の有意の危険因子で,透析患者においても高血圧管理は最も重
要な治療である。
Moriyaらは,家庭血圧を利用した週平均化血圧の脈圧が70
mmHgを超えると全死亡が有意に高くなると報告した。
*
脈圧とは、心臓収縮期の血圧と弛緩期の血圧との差であるようです。
*
・ 病態から
透析患者における高血圧の成因には,1)体液量(細胞外液量)過剰,2)renin-angiotensin
system系の異常(容量負荷に対する不適切なアンジオ
テンシンUの反応性),3)交感神経活性の亢進,4)内皮依存性血管拡張の障害,5)尿毒素,6)遺伝因子,7)エリスロポエチン,などの関与が指摘
されている.
特に,体液量過剰は主因として寄与し,その是正によって60%以上の患者で血圧を正常化できることが報告されている。
すなわち,透析患者における降圧治療の原則はドライウェイト(DW)の適正化が最も重要で,その達成と維持によっても降圧が不十分な場合に降
圧薬投与が有効となる.
・ 血圧異常の診断
血圧測定の標準化が必要。
週あたりの平均血圧(weekly
averaged blood
pressure:WAB)は週3回の透析前後の血圧と毎日の起床時と就寝時の家庭血圧の合計の平均値を
利用して求める.Moriya
らは,このWAB
は週初めの透析前あるいは後のワンポイント血圧測定にくらべて,前向き観察研究で左室肥大や心血管障
害発生に重要な予測因子になると報告している。
・ 血圧異常の治療
ア、降圧血圧目標
HD
後収縮期血圧110 mmHg 未満および180
mmHg以上は,140〜149を基準とした場合,心血管死亡率が,それぞれ,2.8倍,2倍増加する。
明らかな心機能低下がなく,安定して外来透析治療をうけている患者についての血圧管理基準を示す.目標となる血圧値を明記するにはエ
ビデンスが不足している.しかし,一般的には,週初めの透析前血圧値として140/90
mmHg 未満を目標とすべきである.
これまで,透析前の平均血圧値(拡張期血圧+脈圧の1/3)が99 mmHg
以上は予後不良や,合併症のない透析患者で,昼間135/85 mm
Hg 未満,夜間120/80mmHg
未満を目標とすべしとの報告があり,これらを参考にすれば,透析中の血圧低下,過度な起立性低血圧がない
限り,透析開始時の収縮期血圧140
mmHg未満,拡張期血圧90 mmHg
未満は受け入れ可能な値と考えられる。
イ、体液量について
日本透析医学会の統計調査委員会によれば,透析間の体重増加量が体重の2%以下と6%以上で予後が不良であった。
ウ、降圧剤について
適切なDW
を設定し,それが達成されても降圧が得られない場合に降圧薬投与を考慮する。
・ 高血圧治療
透析患者の高血圧治療には必要量の透析が確保されていること(適正透析)が前提条件で,透析時間,回数,血液流量,透析膜などの透析
条件を再考すべきである.その上でDWの適切な設定・達成・維持をめざすべきである.それでも降圧が得られない場合に降圧薬を投与すること
になる.逆に,透析中に高度の血圧低下が発生し,降圧薬の影響が考えられる場合には,降圧薬の減量・中止を考慮し,DWを再度設定し直し
て経過観察した後に適切な降圧薬を選択すべきである。
透析患者の高血圧治療の基本的治療は体液量の過剰を是正することで,減塩を基礎として透析間の体重増加を抑制した上で適切なDW
設定
を行う.日本透析医学会の統計調査委員会によれば,透析間の体重増加量が体重の2%以下と6%以上で予後が不良であった。
Scribnerは,DWが適正に維持されれば透析患者には降圧薬は不要であると指摘している。一般的に採用されているDW
設定の指標としては,
透析中の著明な血圧低下がない,透析終了時血圧は開始時血圧より高くなっていない,末梢に浮腫がない,胸部X線で胸水や肺うっ血がなく,
心胸郭比が50%以下(女性では53%以下)などがあげられる。
透析間体重増加量は,週末でも1.5〜2.0
kg
にすべきことが推奨されている。
5.透析関連低血圧(血圧異常)
・ 透析関連低血圧は,透析中の血圧低下(透析低血圧:intradialytic
hypotension:IDH),起立性低血圧(orthostatic
hypotension),常時低血
圧(chronic sustained
hypotension)に分けられる(オピニオン).
・ 透析時の急な血圧低下や透析終了後の起立性低血圧は予後不良の危険因子である.
・ 低栄養(低アルブミン血症)はplasma
refilling rateを低下させて血圧維持が困難となる要因となる(オピニオン).
・ 最近生じた急激な透析中の血圧低下では,心臓超音波検査などで心機能を評価し,循環器医へ相談すべきである(オピニオン).
・ 透析中の血圧低下を避けるためには時間あたりの除水量を軽減することが必要で,そのためには透析時間の延長も考慮されるべきである。
透析中の血圧低下に影響する因子の中ではDW
の下方設定の要因は大きい.また,体液量が過剰で,透析による除水量が大きい場合にも血圧
低下を惹起しやすい。ほかの重要な要因としては,栄養不良などによる低ルブミン血症では膠質浸透圧が低値となりplasma
refillingrate
が減少し,
除水に伴う間質から血管内への体液移動が不十分となって血圧低下を惹起する可能性がある。
透析中の血圧低下の最大要因は循環血漿量の減少である。しかし,除水速度も通常通りで,循環血漿量の減少も顕著でないのに血圧が低下す
る場合があり,このような例では,心機能障害を問題にすべきである.心機能低下例では,透析開始直後および除水操作によって血圧が容易に低
下する.冠動脈疾患の有無について循環器医に相談すべきである。
循環を制御する自律神経機能の障害も透析低血圧や起立性低血圧の成因として重要である.このことは特に糖尿病患者で顕著である。
透析低血圧とは,K/DOQI
ガイドラインと同様に,透析中に血圧が収縮期血圧として20 mmHg 以上,あるいは症状を伴って平均血圧が10 mmHg
以上,急激に低下した場合と定義する。K/DOQI ガイドラインでは最大除水速度を15
mL/kg/時以下にすることを推奨している。
透析低血圧の発生予防策として低温透析液使用も考慮されるべきかも知れない。
血液濾過透析法(hemodiafiltration
method:HDF)では施行中の血圧低下の発生率が低下する.その有効性の機序は明らかではないが,置換
液量が4〜6 L
と少量のHDF
でも血圧が安定する症例も報告されている。
低血圧の臨床症候として起立性低血圧と常時低血圧がある.前者は,糖尿病患者で頻度が高く,自律神経障害が主因として関与し,DWの上方
修正や昇圧薬投与で対処することになる.後者は透析前の収縮期血圧が100mmHg
未満と低く,症例によっては60〜70 mmHg
程度の場合もある.
成因は明らかでなく,除水不全に陥り,体液量が過剰となってうっ血性心不全を惹起する予後不良の病態である.ノルアドレナリン作動性神経機能
改善剤ドロキシドーパやノルアドレナリン作用を増強させるメチル硫酸アメジニウムなどを投与することになる.
DW
設定を慎重に行い,低栄養や心機能障害を評価する必要がある.(私の印象では、常時低血圧症状の透析患者のなかには、若い時から低血
圧であるといわれる方も含まれるのではなかろうか。)
5.心不全
・ 心不全とは,心室の収縮・拡張能力を損なう構造的,機能的な障害に由来する複合的臨床症候群であり,その主症状は諸臓器のうっ血である。
・ うっ血症状は,問診,理学的所見,胸部レントゲン写真で診断するが,透析開始前の評価を推奨する
・ 原因として非心臓性浮腫の頻度も稀ではないが,特に虚血性心疾患が高率である.
・ 治療の原則は,厳格な塩分制限に基づく体液量管理の徹底である(1A).
・ 原因疾患の内科的治療の主体としてレニン・アンジオテンシン系阻害薬やb
遮断薬の投与を積極的に考慮する。
以下 省略。詳しい事は、血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン 2011を参照されたい。