透析患者への血管石灰化の対応と骨粗鬆症薬の薬効機序

        1.はじめに
           私が骨粗鬆症薬を知ったのは、透析患者に起こりがちな血管石灰化を押しとどめる事が出来るという研究者の報告が最初でした。
           その骨粗鬆症薬は、ビスホスホネート系の薬でありました。まだまだ研究段階であり、各地の透析病院までは届いていないと思い
          ます。おそらく私が知っている透析患者さんは、大部分が原則4時間透析の患者さんであり、心臓の弁の石灰化のようでしょうか。
           私のメル友は、6時間強の透析患者さんですが、透析歴が長く、かなりの部分に石灰化が起こっていると聞く。一旦石灰化が、
          起こった透析患者さんには、長時間透析でも、石灰化を押しとどめ、改善する事には無力である事を知りました。

           今は、老化に伴いがちな骨粗鬆症について調べています。調べれば調べるほど、その発生機序は、複雑であり、まだまだ研究途
          上のような印象を持ちました。
           今回は、こうして知りえた事柄をもとに、透析患者の生命を脅かす血管石灰化への研究者等の研究・対策を覚書として記述してい
          こうと思います。

         2.血管石灰化病変と発症機序
           < 2010年〜大阪市立大学大学院医学研究科血管病態制御学 講師(現職) 塩井 淳氏の 「血管石灰化・リモデリングと糖尿病」
            (http://j-ca.org/wp/wp-content/uploads/2016/04/5005_toku7.pdf) なる論考 2010 の要約です。 >

            主な血管石灰化病変として,動脈硬化(アテローム硬化)による新生内膜のプラークに起こる石灰化(動脈硬化性石灰化)と加齢,
           糖尿病お よび慢性腎不全(透析を含む)に伴う中膜の石灰化(メンケベルグ型中膜石灰化)が知られている。

           ・ 動脈硬化性石灰化病変
              カルシウム沈着の初期病変は,lipid core周辺部に存在する平滑筋細胞の細胞内小器官(おそらくミトコンドリア)内に認められる。
             細胞死とそれに続く細胞崩壊により膜様小胞(membranous vesicles)が細胞外マトリックスに放出される。これがカルシウム沈着の
             核(nucleator)として働き,ヒドロキシアパタイト結晶が形成される。このような無定形なミネラルの沈着は血管石灰化の初期像と考え
             られている。一方,プラーク内に骨・軟骨様組織(骨・軟骨化生)がしばしば観察される。これらの組織の形成には,血管壁に存在す
             る間葉系細胞の骨・軟骨形成細胞への分化が重要な役割 を果たしている。しかし,このような骨・軟骨化生と無定形な初期石灰化
             との関係は明らかにされていない。

           ・ 中膜石灰化病変
              中膜における石灰化病変の成り立ちにも,血管壁細胞(主として血管平滑筋細胞)の変性・細胞死および骨・軟骨化生が関与して
             いる。

           ・ 発症機序
             <動脈硬化性石灰化>
              血管壁においても血管平滑筋細胞が変性に陥ると,細胞膜の機能(イオンチャネル,ポンプなど)が低下 し,膜の選択性が失われ,
             最終的に細胞死に至る。細胞膜が破綻すると,細胞内小器官(主としてミトコンドリア)へのミネラルの沈着や細胞膜の断片が膜様小
             胞(membranous vesicles)を形成し,石灰化の足がかりとなることが示されている。しかし,アポトーシス(細胞死)のみで必ずしも石灰
             化が誘導されるわけではなく,同時に局所のミネラル代謝異常(カルシウム・リン濃度の上昇など)や石灰化抑制機構の障害(石灰化
             抑制作用を有する骨基質蛋白の発現低下,alkaline phosphatase(ALP)活性の上昇,ピロリン酸生成の低下など)によりミネラル沈着
             が引き起こされる。

              血管壁に出現する骨芽 細胞様細胞あるいは軟骨細様細胞は骨・軟骨における石灰化過程と類似の機構で血管石灰化を引き起こす。
             骨芽細胞様細胞は能動的に基質小胞を遊離し,コラーゲンなどの細胞外マトリックスとともにミネラル沈着の核として働く。また,石灰化
             調節蛋白を産生し,ミネラル沈着を促進する。骨芽細胞への分化を促進する因子として,酸化LDL,炎症性サイトカイン,酸化ストレス,
             bone morphogenetic protein-2(BMP-2),細胞外リン濃度の上昇(高リン血症)などが示されている。これらの因子のうち炎症性サイトカ
             インや酸化ストレス(酸化LDLを含む)は本来 の骨芽細胞 の分化を抑制するとされている。このような反応性の違いが骨形成の低下(
             骨粗鬆症)と血管石灰化に関与すると考えられている。

             <中膜石灰化>
                                  動脈壁に炎症,酸化ストレス,メカニカルストレス,AGE(advanced glycation end-product)などの刺激が加わると,中膜平滑筋層にお
                               けるエラスチン分解酵素活性(matrixmetalloproteinases (MMPs),cathepsin S など)が上昇する。
                                 その結果,エラスチンの断片化が引き起こされると,血管壁のリモデリング(コラーゲン産生の亢進など)とともに石灰化が誘導される。
                                 これら2 つのプロセスが血管壁の硬化を促進すると考えられている。エラスチンの断片化による石灰化誘導機構には,変性・断片化し
                              たエラスチンがカルシウム親和性を有することとエラスチン分解により生成されたエラスチンペプチドがエラスチン−ラミニン受容体を介し
                             て平滑筋細胞の骨芽細胞への分化を促進することが関与している。
                                糖尿病では,炎症,酸化ストレス,AGE などの因子が中膜石灰化の促進に関与しており,動脈壁におけるMMPs (MMP-2,MMP-9)の
                             発現上昇も確認されている。したがって,メンケベルグ型の中膜石灰化は動脈壁硬化の進展過程の一部としてとらえることができる。

                                 生体内では,ピロリン酸が生理的な石灰化抑制因子の役割を果たしている。ヒトの血清および尿中にもピロリン酸が証明されている。
                                ピロリン酸はecto-nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1(ENPP1)などのピロリン酸合成酵素の作用によりATP から生成さ
                                れる。

                                  細胞外リン濃度の上昇は,血管平滑筋細胞におけるビタミンK 依存性蛋白であるgrowth arrest specific gene 6(gas6)とその受容体で
                                あるAxlの発現を抑制する。その結果,PI3K-Akt を介するcellsurvival 経路が阻害され,アポトーシスが誘導されるとともに石灰化が促進
                                されることが示されている。

                ナトリウム依存性リン共輸送担体(Pit-1)は,SLC20ファミリー(III 型Na 依存性リン共輸送担体)に属する蛋白であり,その発現は多く
               の組織に認められる。血管平滑筋細胞にもPit-1 が発現しており,リン濃度を上昇させるとPit-1 を介する細胞内へのリン輸送が促進さ
               れるとともに,Runx2 やOC 遺伝子の発現が誘導され,石灰化が引き起こされる。

                生理的な石灰化抑制因子であるピロリン酸はALP を含む種々のホスファターゼにより速やかに分解される。したがって,石灰化にお
               けるALP の役割のひとつは生理的石灰化抑制因子であるピロリン酸を分解することにある。また,ALP は,そのホスファターゼ活性に
               より種々の物質から無機リンを遊離し,局所のリン濃度を上昇させる働きが知られている。
                血管石灰化病変におけるALP の発現誘導機構を明らかにすることは,血管石灰化の治療法を確立するうえで重要な研究課題である。

                                   *  ALP値の基準値内であれば、拮抗するバランス調整内であろうとは思います。しかし、基準値内であっても極端な上昇・下降は、ピロリ
                ン酸の低下・減少に関わるのではないかと推測する。ALP値は、数値がばらつかない方がいいのではないかと。*

                動脈硬化病変部に存在するマクロファージやT リンパ球などの炎症性細胞が血管石灰化の進展に関わると考えられている。炎症性細
               胞が産生・分泌するサイトカインのうちinterferon-(γ IFN-γ),tumor necrosis factor-α(TNF-α),oncostatin M(OSM)などが血管平
               滑筋細胞におけるALPの発現を誘導することが明らかにされている。さらに,TNF-α はRunx2 やMsx2 などの転写因子の誘導を介して
               骨芽細胞への分化を促進することも示されている。Msx2 の作用はWnt シグナル(Wnt3a およびWnt7a)を介することも明らかにされている。
                また,血管壁における炎症反応がTNF-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)を介して血管平滑筋細胞のアポトーシスを誘導し,血管
               石灰化を促進する可能性も示唆されている。

                 破骨細胞の分化誘導を抑制する因子として同定されたosteoprotegerin(OPG)、対してRANKLは破骨細胞の分化誘導に関わる調節因子
               である。
                最近,RANKL が血管石灰化を促進する作用を有することが明らかにされている。その作用は受容体であるRANK を介してBMP-4 の発現を
               増加させることによることも示されている。また,RANKL の作用をOPG が抑制することも確認されている。以上です。

                *  体内においては、相反する働きが拮抗してバランスを取っているように思える。相反する働きの一方が亢進することにより、バランスが崩
                 れ、血管石灰化へと進行しているように推察する。亢進し過ぎた働きを薬により抑えれば、そのバランスは、復旧しそうに思えますが・・・。
                                       私自身で血管石灰化シグナルを感知するには、定期的に行われる血液検査項目の以下の4点でありましょうか。
                     ア、 P・Ca値のガイドライン基準値下限域でのコントロールが出来ているか。
                     イ、 PTH値のガイドライン 2006年版の水準域へのコントロールが出来ているか。
                     ウ、 CRPは、(−)であること。体内での炎症を極力抑えることが肝要。
                     エ、 ALP値は、ガイドライン基準値内(厳密にいえば、イのPTH値である時のALP値水準を維持する事)。要は、ピロリン酸を極端に
                       分解させないことでありましょうか。*                              

         3.現在の透析患者への血管石灰化への対応の最前線
            私が知りえた透析患者さんへの石灰化対応の現状は、論文上の事・現場サイドでの最先端の対応・研究機関のDrどおしの
           やりとりからではあります。

           (1) 論文上での事
                拙稿にも記載しておりますが、「この血管の石灰化に対処するには、骨粗しょう症に用いられる薬 エチドロネート(
               EHDP)を用いるようで、400mg/1day を2週間投与し、その後10週間休薬した場合、格段に血管の石灰化率が低下す
               る。こういった研究でありました。
                  ( 参考  http://medical.nikkeibp.co.jp/all/data/ds-pharma/bis070830.pdf   の論文を参照下さい。)

                まだ、大学での研究成果でありましょう。一般病院では、まだまだ行われないのでありましょう。研究成果は、石灰化の著
               しい透析患者を2群に分け、投与組と非投与組での比較のようでした。

           (2) 現場サイドでの対応
               「これは当院の骨粗鬆症の患者に使っているビスフォスですが、3ヶ月に1回にしています。薬価は5059円です。」
               ボンピバ静注の事でしょう。詳しくは、http://medical.taishotoyama.co.jp/data/tenp/htm/bon/1tenpu.htm を参照されたい。


               某Drの掲示板に、血管石灰化及び心臓弁の石灰化の進行に対処する方法が記述されている。その方法は、保険診療外の
              事項に相当し、あくまで該当する薬(認可されている薬)代のみ全額自己負担による自己責任でのみ出来うる事のように推測
              致しました。詳しい事は、下記 URLを参照されたい。
                   http://www.hdf.jp/bbs/c-board.cgi?cmd=one;no=34959;id=#34959 
                   http://www.hdf.jp/bbs/c-board.cgi?cmd=one;no=34960;id=#34960
                   http://www.hdf.jp/bbs/c-board.cgi?cmd=one;no=34969;id=#34969  以上です。

           (3) 研究機関のDrどおしのやりとり抜粋
                必要個所の抜粋
               「薬剤の使用と腎機能の関係でいいますと、透析学会ですとか腎臓学会などから出されている指針は、今度はeGFRではなく
              クレアチニンクリアランスになってしまいますけれども、それが50㎖/minを超えていれば腎障害に関係なく薬剤を使うことができ
              ますが、10〜50㎖/minのクレアチニンクリアランスの場合にはいろいろ注意が必要になるということになります。
               粗鬆症の薬剤でいいますと、とりわけクレアチニンクリアランスが30㎖/minを切るような方では、多くのビスホスホネートが禁忌、
              あるいは慎重投与ということになっています。投与が望ましいと考えられる患者さんに対しては、慎重投与という扱いになっている
              薬剤を選んでいただくのがよいと思います。アレンドロネート、ミノドロン酸、この2種類は慎重投与で使えますので、注意して使用
              していただければ大丈夫だと思います。
               一方でPTH製剤は、これは腎不全が進むにつれて続発性の副甲状腺機能亢進症が起こる、すなわちPTHが上がるという状況
              ですから、使いにくい薬剤となります。PTH製剤については今のところ経験が乏しいので、その辺は現在、腎臓の専門の先生方が
              積極的に取り組んでおられますから、いずれそういったエビデンスあるいは情報が出てくると思います。
               腎機能に影響なく使えるということで注目されているのがデノスマブという抗RANKL抗体です。生物学的製剤ですけれども、これ
              は薬剤そのものが腎排泄ですとか腎代謝がないので、そういった意味では腎障害のある方にとって非常に使いやすい薬剤といえ
              ます。ただ、一方で、この薬は非常に強力に骨吸収を抑えて、血中のカルシウム濃度を低下させるという作用がありますので、とり
              わけCKDのステージ4以上の腎機能の悪い方では、低カルシウム血症に対しての慎重な配慮が必要になってきます。
               先ほどのデノスマブという薬剤ですと、投与後1〜2週間目の血中カルシウム濃度や、低カルシウム血症によるテタニーなどの症
              状に注意を払っていただくことが大切だと思います。」
                http://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/doctorsalon/upload_docs/150359-1-15.pdf からの引用です。

                                * テタニーとは、「血液中のカルシウムやマグネシウムの減少(低カルシウム血症・低マグネシウム血症)によって起こる。 軽症の
               ものでは口周囲や指先のしびれ・ピリピリ感などの知覚異常が出現し、症状が強くなると手足の筋に強い拘縮が起こり、手足の屈
               曲が数分間持続する。別名 こむら返り 筋肉の痙攣とも言う。重症の場合は、喉頭筋、呼吸筋、全身の筋にまで及ぶ。」
                 ( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%83%BC 最終更新 2017年1月29日 (日) 09:13 より引用)

          (4) CKDにおける骨折を予防する治療法について
               執筆:大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学教授 稲葉雅章

               「eGFRが60 ml/分未満まで低下すると血清リンの蓄積とそれに伴う血清Caの低下、FGF-23の亢進による血清1,25(OH)2Dの低下で
              二次性副甲状腺機能亢進症が起こりPTH過剰症による高回転型骨粗鬆症が起こる(文献3)
  
               PTH過剰症はCKD患者の骨代謝回転を規定する最重要因子である。過剰なPTHはその最も激しい型が骨喪失間隙に繊維化が生じ
              る線維性骨炎である。
               PTH過剰は、特に皮質骨の骨吸収を促進し、皮質骨多孔症や最終的には皮質骨幅の著明な短縮を惹起する(文献4)。そのため、大
              腿骨近位部など皮質骨によって骨強度が保たれている部位が脆弱化することでこれら部位での骨折が好発する。

               実際、多数の報告でG3以上のCKDでは大腿骨近位部の骨折リスクは2-5倍程度となっている。したがって、CKD G3以上の腎性骨症
              の治療ターゲットは骨吸収を促進する血清PTHの正常化となる。

               実際、シナカルセトの使用開始以降でCKD 5D患者での大腿骨近位部骨折の発生率低下が示されている(文献5)。しかし、PTHの骨反
              応性は男性<閉経前女性<閉経後女性の順に増大し、閉経以外にも種々の病態合併によって個人差があるため、根本的には骨代謝回
              転自体を正常化させる必要があり、血清骨マーカーの正常化を目指す必要がある。すなわち、PTH制御のみでなく、骨粗鬆症自体に対
              する治療が求められる。

                                  * 骨折リスクを低下させるには、 ”根本的には骨代謝回転自体を正常化させる必要があり、血清骨マーカーの正常化を目指す必要が
               ある。”と氏は述べられていますが、古稀を過ぎた私の骨密度は、年々低下している。しかし、骨吸収マーカー・骨形成マーカー共に基準
               値内にあります。これって、これ以上の対策のしようが無いという事になりましょうか。*

               CKD患者でも投薬可能で、骨吸収抑制の割に骨形成を抑制する程度の少ない薬剤が使用可能となってきており、最近発症率の上昇が
              懸念され、血管石灰化リスクでもある無形成骨の発症危険性を少なくしたうえで、骨折率を低下させることが期待されている。」と。
               ( https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_29/ch02.html 2019 からの抜粋 )

          4.骨粗鬆症薬一覧
             詳しくは、http://薬局実習.com/骨粗鬆症/骨粗鬆症薬一覧.html を参照されたい。

             ・上記 (3)で出てきた骨粗鬆症薬のエチドロネート(EHDP)について
              骨粗鬆症薬一覧には出てきていませんが、ビスホスホネート系で、骨吸収を抑制する薬、破骨細胞に取り込まれ働きを抑制する。
              [ 第一世代 ]かと。或いは、エチドロン酸ニナトリュム(一般名 カ)の事か、商品名 ダイドロネルの事であろうか。

             ・ ボンピバ静注
                ビスホスホネート系で、一般名では、イバンドロ酸 商品名 ボンピバ注 骨吸収を抑制する薬、破骨細胞に取り込まれ働きを
               抑制する。[  第二世代 ]

                             ・ デノスマブ
                ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤 一般名は、デノスマブ 商品名 プラリア 骨吸収を抑制する薬、破骨細胞を活性化
               するRANKLを不活化。腎機能に影響なく使える点、腎障害のある方にとって非常に使いやすい薬剤とか。

                * 破骨細胞には、RANKLと呼ばれるたんぱく質が必要で、RANKLとその受容体であるRANKが結合して破骨細胞が生まれる
                 とか。プラリアは、RANKLと親和性が強く、RANKLとすぐ結合。RANKとの結合を阻害する働きをするようです。*

                            ・ アレンドロネート
               アレンドロ酸ナトリウム(一般名カ) 商品名 ボナロン・フォサマック カ ビスホスホネート系の薬。骨吸収を抑制する薬、破骨細胞
              に取り込まれ働きを抑制する。[  第二世代 ]

             ・ ミノドロン酸
               ビスホスホネート系の第三世代 薬。商品名 リカルボン・ボノテオ 骨吸収を抑制する薬、破骨細胞に取り込まれ働きを抑制する。

               *  ビスホスホネート系の骨粗鬆症薬については、「ビスホスホネート(BPs 骨粗鬆症薬)はピロリン酸の構造類似体であり,骨組織の
                リン酸カルシウム結晶に強固に結合する性質を有するとともに破骨細胞による骨吸収を抑制することが知られている。」と。    
                  (http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/52157/1/04-deyama.pdf からの引用)

                 確かにピロリン酸は、生理的な石灰化抑制因子であり、ビスホスホネート(BPs 骨粗鬆症薬)はピロリン酸の構造類似体であることか
               ら血管石灰化抑制方向にはたらくのでしょう。透析患者には、慎重投与の但し書きがある物を利用し、薬についてよくご存じのDrにゆだ
               ねられんことを。*
       
             透析患者で血管の石灰化・心臓の弁の石灰化が進行している方には、保険診療外の扱いですので、担当医とよく話し合い、自己責任に
            て、対処して頂くしか手はないようです。一般透析専門病院や各地の市民病院で、果たして対処して頂けるのか心もとない状況ではありま
            すが・・・・。

             かって、一般透析病院と某市民病院間でこうした患者のタライ回し状況があったと聞き及んでおりますから。

                      * 最近の骨粗鬆薬の使用限界について
           「問題は多くの骨粗鬆症治療薬が腎機能低下時に使用できなくなることである.ビスホスホネート製剤は腎機能障害下では骨に蓄積しやすく,C
          KDステージ4以降においては基本的に使用禁忌である.デノスマブはCKD患者でも劣らない臨床効果を示すと期待されるが,副作用である低Ca血
          症が時に激烈で,症例をよく選んだうえで十分な副作用対策を行いながら使用することが好ましい.テリパラチドもまたCKD患者への使用が推奨さ
          れているが,少なくとも透析患者においてはその血管拡張作用から血圧低下を来し、継続が困難になる例が多い。」と。
       ( https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/5/104_948/_pdf 2015 からの抜粋 著者 風間 順一郎 新潟大学医歯学総合病院血液浄化療法部)

         ( 風間 順一郎氏の経歴は、  https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000010345499/  を参照されたい。)

                    付記 1
          https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjnephrol1959/49/4/49_4_416/_pdf    2007年「腎と異所性石灰化」

                   付記2
          「腎不全患者では, 潜在的に VitK2が不足している事が報告されており,これが血管石灰化を促進している可能性も示唆されている。」
            ( https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma/69/2/69_2_174/_pdf/-char/ja 血管石灰化病変におけるビタミンK2のOPN、MGPmRNA発現
             の影響 2009年からの抜粋 )

        付記 3
         骨形成推進薬 テリパラチドについて

         「テリパラチドは、わが国で最初の骨形成促進剤となります。骨形成を促進するということは、骨の量を増やすのみでなく、骨の質、“骨質”の改善に
        効果的といえます。これまでの骨吸収を抑える薬は、骨の新陳代謝を抑えることになりますので、古い骨が蓄積する傾向にあります。しかし、テリパラ
        チドは、骨の新陳代謝を盛んにし、積極的に新しい骨を作ることができますので、骨質を改善するものと考えられます。最近、骨の微細損傷であるm
        icro-damageが、テリパラチド投与によって減少することが、骨粗鬆症患者の腸骨生検組織で確認されています。したがって、この薬剤は、骨密度の
        増加効果に優れているのみでなく、骨質についても、まさに、これまでにない効果が認められているのです。 」
         ( 詳しくは、http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/101028html/index2.html 平成22年 を参照されたい。)

                   「テリパラチドは、PTHの生理活性を有するN端アミノ酸34個からなるペプチドで、PTH(1-34)製剤の間歇投与で骨モデリング作用による骨形成が促
        進される。一般の骨粗鬆症患者への投与では腎尿細管でのCa再吸収促進により高Ca血症が出現するが、CKD患者では腎機能低下につれて血清
        Ca上昇は減弱すると考えられる。ただし、血管拡張作用による血圧低下が透析患者で増えることが学会で報告されている。
         海綿骨部の骨折抑制効果が最も強く、医療コストを考慮しない場合、脊椎骨折リスクの高い患者では第一選択薬となる。一般的に連日製剤より週
        一製剤のほうが骨リモデリング促進作用は弱く、皮質骨に対する悪影響が弱いと考えられる。」
         ( https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_29/ch02.html 2019 からの抜粋 )
         しかし、上記薬剤にも副作用は、あるようです。 
          https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000193448.pdf  参照されたい。

                  * テリパラチド使用例 
          http://www.myschedule.jp/jsdt_archive/detail.php?session_unique_id=057-O-0999&sess_id=4576&strong=1 2015 一読されたい。

        付記 4
         カテプシン K阻害薬、抗スクレロスチン抗体について
          ・「カテプシンK阻害薬は破骨細胞内に存在し、骨吸収に必須の酵素であるカテプシンKを特異的に阻害する薬剤である。その為、破骨細胞形成には
         影響せず薬剤投与後は不活性型の破骨細胞が存在することになる。その結果、骨芽細胞機能の二次的な抑制はビスホスホネートと比べて弱くなり、
         無形性骨の発生率が低下する。CKDでの腎機能低下で投与量の調整をする必要がなく、無形性骨の恐れも少ないことからCKD患者で有望な薬剤とな
         ると考えられている。」

                        *  『オダナカチブの開発中止「衝撃的」  期待の新薬が一転、専門医から惜しむ声( 日刊薬業 2016年10月7日 )
             日本骨粗鬆症学会が6日、仙台市で開幕した。初日のシンポジウム「骨粗鬆症の薬物療法Update」では、新規骨粗鬆症治療薬の開発に関する
            トピックスなどが報告された。既存薬を上回る効果や安全性が期待できる新薬として注目されていたカテプシンK阻害剤オダナカチブが今秋に開
            発中止となったことに対し、「衝撃的」「残念」といった声が相次いだ。
             それは、独立機関による治験データの判定と分析によって、脳卒中のリスク上昇が確認されたため、9月に全世界での開発中止が発表された。』
               ( https://square.umin.ac.jp/massie-tmd/odanakatib.html  参照 )

          ・「抗スクレロスチン抗体は骨細胞から分泌される骨芽細胞抑制因子であるスクレロスチンに対する中和抗体で、投与後は骨芽細胞による骨形成が増
         加する。治験データでは骨形成促進作用が強く、骨折抑制効果も強いと思われる。ただし、投与期間が長期の場合の骨力学特性の影響などまだ解決
         すべき問題が山積している。これらが明確になればCKDでの使用も抗体製剤であるため問題ないと考えられ、期待できる薬剤である。」
          ( 以上は、https://www.jinzou.net/01/pro/sentan/vol_29/ch02.html  2019 からの抜粋 )

            * 「残念ながら2019年現在、1年しか使用できません(2年目以降は骨密度増加のスピードがやや低下する為)」
               ( 詳しくは、http://www.touei-clinic.jp/app/Blogarticleview/index/ArticleId/509 を参照されたい。)



      



                










                 

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