血管石灰化対策としての無酢酸透析液使用について

    1.はじめに
       血管の石灰化予防には、長時間透析は有効であろうという信念のもと私は、かれこれ数年実施して貰っている。しかし、石灰化した血管には、長時間透析と
      いえど無力で有る事も知りました。
       石灰化した血管対策には、骨粗しょう症薬が、有効であることも知りえた。
       予防対策ではありますが、長時間透析に加えて無酢酸透析液使用においてかなりの有効性があるという論文に出合った。
                   https://www.jinnaika.com/wp/wp-content/uploads/2018/04/pharmamedica.pdf であります。

               メールで知り合った透析患者さんからの某Dr掲示板に掲載されておりました。

    2.一読されたい
       詳しくは、上記 pdfを一読されたい。透析患者さん以上に透析施設スタッフ・施設管理者さんに読んで頂きたい。
       「無酢酸透析液であるメリット まとめると

       〇フリーラジカルの産生が低い、好中球の刺激が低い 生体適合性が高い

       〇CRP IL−6 の値が 有意に低下

       〇FetuinAの有意な上昇 血管石灰化の予防

       〇レプチンの有意な低下 食欲増進作用

       〇ペントジシンの低下 血管石灰化の予防

       〇クレアチニンインデックスも有意差をもって上昇
」とか。

              但し書き、デメリットもあるようです。
       無酢酸透析液には、クエン酸含有である事。クエン酸を長期に体内に入れる事は、現段階では、はっきりとしていない。あと10年位待たないと明確にはならないか
      のようです。
       
      <長時間透析における既存透析液の問題点>
       「従来の酢酸含有透析後の低カリウム血症や低リン血症、透析によるアミノ酸の漏出が問題となる。また逆に、透析液からの血中への重炭酸の過剰負荷はオーバ
      ー・アルカローシスを惹起する可能性もあり、それに伴う血中イオン化カルシウムの動態も無視することはできない。加えて、透析液に含まれるpH調整剤は確実に生
      体へ負荷されるため、酢酸含有重炭酸透析液の使用下では酢酸不耐症を、またクエン酸含有重炭酸透析液の使用下ではクエン酸による陽イオンのキレートの影響
      も危惧されるべきである。長時間透析においては透析液重炭酸濃度やカルシウム濃度の再考も重要事項の一つであろう。
       さらに糖尿病患者は年々増加しており、適正な透析液グルコース濃度の検討も必要である。」
       ( http://longhd.jp/downloads/%E7%AC%AC12%E5%9B%9E%E3%80%80%E9%95%B7%E6%99%82%E9%96%93%E9%80%8F%E6%9E%90%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A%EF%BC%88%E6%9C%80%E7%B5%8210.28%EF%BC%89.pdf  2016年 発表 S2−04 施設長時間透析に望まれる透析液組成  pdf 49/88コマより抜粋 )

           *  酢酸不耐性・・・血中酢酸濃度の上昇による透析中の血圧低下、頭痛、嘔気、嘔吐などの不均衡症候群を言い、この発症には、肝機能の低下があると、酢
            酸が代謝しきれなく、酢酸不耐症を呈することがあるとか。特に高齢者や糖尿病患者は代謝機能も低下しているので注意が必要ですと。
              ( http://www.shiinoki-clinic.com/ShiinokiclinicB/afbf.html 参照 )*

           * オーバーアルカローシス・・生体の血液のpHは、常に一定の(7.4±0.05)になるように保たれており、これを酸塩基平衡とよび、この酸塩基平衡に異常がおこ
                           り、pHが7.45以上になった状態をアルカローシス、pHが7.35未満になった状態をアシドーシスといいます。
                            透析患者では、代謝性アルカローシス・アシドーシスと言い、アルカローシスは、重炭酸イオン濃度が高く、水素イオンが減少する事。
                             (起こりえる症状としては、反復性嘔吐でしょうか。透析患者がアルカローシスに陥る機序としては、<H+を喪失すると酸塩基平衡
                            は右側の方向に傾き、 HCO3が増加してアルカローシスとなります。
                             何らかの原因で大量のK+が失われて低カリウム血症となると、K+が細胞内から細胞外に移行します。すると電気的中性を維持す
                            るためにH+が細胞外液から細胞内へ移行します。また、遠位尿細管のNaK交換部位でも、Kの代わりにH+が排泄されやすくなりま
                            す。その結果、細胞外のH+は減少し、アルカローシスが起こります。>)

             「代謝性アルカローシスは心肺停止、低血圧、低K血症、低酸素血症、不整脈などの危険因子とされています。重炭酸前値が27mEq/L以上を注意レベルと
            してますが、某Drの患者もここまでは超えることはないでしょうが、過度のアルカローシスはFDA情報ではいいことはないようです。
             ただし、日本では採血日がアメリカと違うことなどを考慮すると27mEq/Lより危険水準は低くすべきでしょうね。わが国で危険因子のような情報は当局からあ
            がっていないので、エビデンスとは言えないまでも、25mEq/Lは超えないほうが良いのではないでしょうか。」という意見を述べられる方もあるようです。*


           * クエン酸のキレート作用
            「クエン酸は、アルカリ土類金属とキレートしやすいので、透析液成分中のカルシウムやマグネシウムとキレートする。この作用は特にカルシウムに対して強い
           のであるが、透析治療においてはカルシウム量の調節が非常に重要であるので、キレートによるイオン化カルシウム濃度の減少は患者のカルシウム収支に大
           きく影響する。例えばクエン酸とカルシウムが透析液中でほぼ同濃度(イオン当量比)で含まれていた場合、20〜30%程度のカルシウムがキレートされ、その
           分だけ透析液中のイオン化カルシウム濃度が減少し、結果的に血中カルシウム濃度のコントロールが困難になってしまう。

            一般に血中イオン化カルシウム濃度が1.0mmol/L付近まで低下すると、下肢痙攣などの副作用の頻度が増える。このため透析液のイオン化カルシウム
           濃度は1.25mmol/L以上であることが望ましい。また、クエン酸も透析により体内に入るため、血中でクエン酸とカルシウムが結合した結果、難溶性のクエ
           ン酸カルシウムが生成し、血管内に沈着する恐れも懸念されている。さらに、クエン酸によるイオン化カルシウム濃度の低下は心筋や血管平滑筋の弛緩を促し、
           低血圧を招く点、クエン酸の抗凝固作用により出血傾向の患者には使いにくい点でも問題である。

            また、クエン酸は固体であるために通常の取り扱いにおいては扱いやすいが、濃厚液は強酸性であるため、粉末状態で保管していても部分的な吸湿があっ
           た場合には溶解装置等の部分的な金属腐食や樹脂劣化等を生じさせることもある。」とか。
            (  https://patents.google.com/patent/WO2013084922A1/ja からの引用 )*

         *  血中Caイオンについて
           「Ca2+基準範囲(成人)−例: 1.15〜1.33 mmol/L(4.6〜5.3 mg/dL)

           人体に含まれている約1 kgのカルシウムの実質的にほぼすべて(99%)は骨と歯に含まれています。残りの1%はあらゆる細胞の細胞内液と細胞外液に分布し
          ています。血漿中に循環するカルシウムはたった8.7 mmol(350 mg)で、その総濃度は〜2.5 mmol/L(10 mg/dL)です。
           これら350 mgの内、約 40%はタンパク質(ほとんどがアルブミン)と結合しており、10%は一連の陰イオン(バイカーボネート、ラクテート、リン酸塩など)との複合
          体として存在します。残り50%は「フリーの」イオン化カルシウム(Ca2+)として、〜1.25 mmol/L(5 mg/dL)の濃度で循環しています。
           血漿中に存在するカルシウムの3つの形態は平衡状態にありますが、生理的に活性なのは Ca2+として存在する部分のみです。」と。
           ( https://www.acute-care.jp/ja-jp/learning/glossary/bloodgas/ca  からの抜粋 )*

            知りたいのは、1.25 mmol/L(5 mg/dL)であれば、1mmol/Lは、何 mEq/Lに相当するか。1 mEq/L = 0.5 mmol/L = 20 mg/Lであれば、1mmol/L=2mEq/Lカ。
            とすれば、1.25 mmol/L(5 mg/dL)=2.5mEq/Lでしょうか。とすれば、透析液Ca濃度は、2.5mEq/L以上の数値であるべきでしょう。体内Caイオンの存在
           形態からすれば。

            当院の透析液濃度
            検査日及び透析液電解質濃度(mmol/L)
                  Na   K   iCa                  Cl
            7/24       144    <2.0   1.19 
                                                    (2.38mEq/Lカ)        であるようです。 これからすると、当院でのiCa濃度は、体内活性化Caイオン濃度に一応準拠させてい
                                          るのか。
                                                                                しかし、透析液としては、若干低いのではないかと。
                                                                                              透析液としてのCa濃度は、2.5では低過ぎ、3.0mEq/Lでは、高すぎる。だから2.75mEq/Lが販売
                                          されるようになったと理解していますが・・・。

                                                                                       平成30年10月18日 記載 
       付記 1
        カーボスタ透析液使用時の検査データ
         https://enjinkai.com/society/images/HDF%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A%E7%99%BA%E8%A1%A8.pdf 参照されたい。
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