長時間透析・高血流透析患者に於ける体内のカリウムについて

         1.はじめに
            「カリウムは,最も豊富な細胞内陽イオンであるが,体内総カリウムのわずか2%程度だけが細胞外(血管内)に
                         存在する。
            細胞内カリウムのほとんどは筋細胞内に含まれるので,体内の総カリウム量は除脂肪体重に概ね比例する。
            平均的な70kgの成人は約3500mEqのカリウムを有する。3500mEq≒136.7gであろうか。

            *  mEqとは、ミリイクイバレントと読み、ミリは、1000mg=1gで使うのと同じ、ミリ、Eq(イクイバレント)は、摂取して体の
             中に入った後に溶けている溶液中に、電荷を持ったつぶがいくつあるかと考える指標です。参考までに、K 1g
             =25.6mEqだそうです。*

            カリウムは細胞内浸透圧を決定する主要因子である。ICFおよびECF{細胞内液(ICF)と細胞外液(ECF)に分け
           られるが、細胞内液 は体液に含まないことが多い。 細胞外液には、血液やリンパ液、血管の外の細胞間を 満た
           す組織液、および体腔内の体腔液などが含まれる。}のカリウム濃度比は細胞膜の分極に強く影響し,ひいては神
           経インパルスの伝導および(心筋を含む)筋細胞の収縮など,細胞の重要な過程に影響を及ぼす。
            したがって,血漿カリウム濃度の比較的小さな変化が大きな臨床症状を生むことがある。」(左記記述は、下記の
           URL http://merckmanual.jp/mmpej/sec12/ch156/ch156f.html#sec12-ch156-ch156f-785 からの抜粋であります。)
           と記述されていた。

            また、別のURLでは、体内のカリウム調節機能として次のような記述があった。
            「細胞内のカリウム濃度を高く保ち、そしてナトリウム濃度を低く保つことは、細胞が生き生きと機能し、私たちのか
                        らだが生命を維持するために不可欠。
               私たちのからだの細胞は、常に細胞内のナトリウムを外に汲み出し、細胞外のカリウムを細胞内に汲み入れるしく
                       みを備えている。

              このしくみをナトリウム・カリウム・イオンポンプといい、その正体は細胞膜に存在するナトリウム・カリウム・ATPアー
                       ゼという酵素であることがわかっている。」と。(詳しくは、下記URLを参照されたい。
                                 http://www.rakuten.ne.jp/gold/asuka-jhac/recommend/k.htm )

              しかし、細胞内液から細胞外液へのカリウムの移動は、どのようなしくみでありましょうか。一例としては、「細胞内か
                       ら血液中へのカリウムの移動には、血液が酸性に傾いた時など、体の状態に応じてカリウムが細胞のなかから血液中
                      に移動する。」とか。平成26年12月6日(金)の透析日 当Drより、「血液中のK濃度が下がれば、細胞内のカリウムが、
                      30分後には、移動してくる。」と説明された。
                        次回の透析日に、再度Drに、体内のカリウムが、30分後には、移動するという文献を教えてくださいとお聞き致しまし
                      たが、「ほんの一行しか書かれていないから、ごにょごにょと。」良く分かりませんでした。
           最後には、「常識です。常識 。」で終わり。まあ大抵こんな感じで終わります。患者は、誠実に答えて欲しいと思ってい
          るのですが・・。       

            私は、6時間・血流360ml/分で透析をしている患者です。平成26年から長時間透析を実施するようになってから、
           血液検査での血漿カリウム値が、前 4mEq/L台 後 3mEq/L台でありますが、時として2.9mEq/Lになり、1ヶ月
           半近くこの状態が続いています。血液検査をする機関が発行する検査表には、カリウム値の正常値範囲は、3.5〜
           5.1とある。

            この検査は、毎月第1・3週の月曜日に実施し、透析の無い日が二日ある翌日でありますが、時には、透析の無い一
           日後の水曜日に血液検査が行われる事もあります。そうした結果を元に、自身の体内のカリウムの推移について考え
           てみました。

         2.私のカリウム値の年次別推移
           ・ 平成24(2012)年      5時間透析 血流量 275〜325ml/分
                 4/23  5/7  5/21 6/4  6/18 7/9  7/23 8/6 8/20 9/3 9/24 10/10 10/20  11/5  11/19 12/3 12/17
           透析前  4.0    3.8    4.1   4.1    4.0   4.3   4.4   4.4   4.0   4.2   3.8    3.8     4.2      3.9     4.1     3.8    3.9
                        透析後    3.1   3.1    3.2   3.3     3.1   3.2  3.4   3.1    3.1  3.1   2.8    2.9     3.2      3.1     3.2     3.3    3.3

                      ・ 平成25(2013)年 5時間透析  血流量 330〜400ml/分 5月より6時間透析 血流量 330〜360ml/分
                1/6 1/20 2/3  2/17 3/3 3/17 4/7 4/21 5/12 5/26 6/9 6/23 7/7  7/23 8/4 8/18 9/1 9/17 10/610/2011/511/17
           透析前  4.6   4.4   4.0   4.0   4.4   4.3   4.9   4.6  4.1     4.2   4.7   4.5   4.8   4.4   4.1   4.0   4.1  4.4    4.2    4.2   4.2   4.6
           透析後  4.0   3.4   3.0   3.1   3.2   3.3   3.5   3.2  2.9     2.9   3.0   3.3   3.1   3.2   3.0   3.0   3.1  3.0    2.9    2.9   2.9   3.1
                               (溶血2+)                                                                                                           (水曜日)          (水曜日)
                          * 概ね透析前カリウム値は、3.5mEq/L以上であり、低カリウム血症でもなさそうです。勿論高カリウム血症でもない。
            しかし、透析後では、明らかに3.5mEq/L以下を示し、軽度の低カリウム血症を呈していましょうか。今の所、体内の
            カリウム循環が、適切に行われる状況でありますから、心配なさそうです。が、透析前のカリウム値が、3.5mEq/Lに
            近づいていくようになった場合が、要注意でありましょうか。*

          ・ 平成27(2015)年
                                          1/5  1/26   2/9   2/23  3/9   3/23  4/13  4/27  5/11 5/25  6/8   6/22  7/13 7/27 8/10 8/24 9/14 9/28 10/14
            透析前      4.0    3.9     4.0     4.1    4.5    3.6     3.9    4.1     4.3    4.2    4.4     4.5    4.5   4.4    4.5    4.0   3.4    3.6     4.0
            透析後      3.2    3.4     3.0     3.0    3.3    3.2     2.9    2.9     2.9    3.0    2.8     3.1    3.1   3.1    3.1    2.9   2.9    2.9     3.0
                  10/26  11/19  11/25 12/7  12/21
                          透析前      4.4      4.4      4.1     4.4     4.4
            透析後      3.2      3.3      3.2     3.2     3.0

                           * 平成27(2015)年の9月は、カリウム値の前後共に正常値範囲内?でありましょうか。*
 
                     ・ 平成28(2016)年
                 1/5  1/25  2/8  2/22  3/14  3/28  4/11 4/25  5/9  5/16 5/23
           透析前    4.6    4.2    4.3    4.1    4.2    3.8     3.8    4.1    3.9   4.0    4.0
           透析後    3.5    3.3    3.0    3.2    3.2    3.0     3.2    3.0    3.1   2.7    3.1
                                                                                                           旅行
                                                 透析
            * 5月は、当院と同じ条件でのHDF6時間透析であり、DWも77.0Kgであったにもかかわらず、16日と23日では、若干の差を生じている。
            食事量も家に居る時より野菜類を多めに取り、16日早朝は、バナナ1本を食していたにもかかわらずでありました。不思議な現象であります。

                           
         3.私の尿量記録
             ・ 平成24年
               1月(7・8日)2月(5日)3月(4日)4月(8日)5月(6日) 6月(3日)7月(8日)8月(5日)9月(2日)10月(7日)
               430ml   400   380   440   420   200    450   350   ?    400
               380ml 

               11月(4日)12月(2日)   *   1年間を通して、尿量は、400ml前後。ただ、11・12月以降は、やや水分
                550ml   710      摂取量を増やした事が、尿量の増加となったと思います。

             ・ 平成25年
               1月(5・6日) 2月(3日) 3月 4月(7日) 5月(5日) 6月 7月 8月(3日)
                620ml    740    ?  430     620    ?  ?   430
                810ml

                             ・ 平成26年
                1月(12日) 2月(23日) 3月(16日) 4月(6日) 5月  6月(1日) 7月 8月(3日) 9月 10月(5日) 11月(2日)
                 520ml   350     350    520   ?    390    ?  320   ?   350     300

              私は、透析歴10年目になろうとしておりますが、まだ辛うじて腎臓の糸球体が5%程度働いているようで、尿も出るよう
             です。この糸球体は、正常に機能はしていないようで、「蛋白尿(4++)・糖(4++)等を含んでおります。」(平成26年
             11月11日 尿検査にて)

           4.私の体内にあるカリウム量
                 人の体の体液の割合は、約60%。体液の内訳は、細胞内に40%、間質に15%、血管内には、体重の5%にあた
                る血液として存在しているようです。(一般的にはという意味でしょう。)

                実際は、成人男性:体重×0.6 (体重の60%が水分と考える)
                      成人女性:体重×0.5
                                               高齢男性:体重×0.55
                                               高齢女性:体重×0.45                                      が適切であるようです。

                ちなみに間質とは、生体内にある機能している器官等を実質支えたり結合させている物を言い、血管・神経を含むよう
               であります。

              透析では、DW(透析患者の一番生存に適したその時の維持すると良い体重)を越えた体重分を透析で、徐水と称して水分
             を取り除く作業を行う。

              私の例で言えば、現在 DW 74.5Kg。(平成26年11月29日現在)とすれば、血管中にある私の血液は、体重の5%分で
             ありましょうから、76Kgであれば、76000g×0.05=3800g=3.8Kgとなりましょうか。

              水分に置き換えれば、1Kg=1ℓ であり、3.8Kgは、3.8ℓに相当します。私の血液総量は、平成26年11月頃には、3.8ℓ
             相当と理解すればいいのでありましょう。

              また、カリウムは、体内総カリウムのわずか2%程度だけが細胞外(血管内)に存在するとか。

              さて、平成26年10月20日(月曜日)の透析前K値 4.2mEq/L 後 2.9mEq/L  前体重 77.7Kg 後 74.6Kg
                 平成26年11月11日(火曜日)の検診では、空腹時K値 4.4mEq/L(前日の透析後から翌日まで、水分等一切取らず)
                                            当日体重 78.2Kg(透析時の服装より大目に着込んで測りましたから、1.2
                                            Kg引いて77Kg程度であった筈。)
                 平成26年11月5日(水曜日)の透析前K値 4.2mEq/L 後 2.9mEq/L 前体重 76.5Kg 

             *  月曜日の透析前までは、10月20日(月)の透析前K値からみて血管内には、カリウム値は、4.2mEq/Lですから、血管内のカリ
              ウム量は、4.2×3.9≒16.4mEqでしょうか。重さにして約0.64g。これは、体内の総カリウム量のほぼ2%であれば、総量は、
              16.4÷0.02≒820mEqとなりましょうか。冒頭の体重70Kgの成人のカリウム総量は、約3500mEqとか。平成26年10月20日
                              (月)の前日の体内総カリウム量は、70Kgの健常者成人の約23%相当であり、健康な方と比べて大そうカリウム総量は、少ない
              状況ではなかろう。
               血液量は、体重の5%とすれば、77.7×0.05≒3.9Kg 3.9Kgを量にすれば、3.9ℓか。*

               冒頭にも、「平均的な70kgの成人は約3500mEqのカリウムを有する。」と記載いたしましたが、重さにすれば、136.7gとなる。
               当日の透析後のK値は、2.9mEq/Lであり、後体重は、74.6Kg。とすれば、血管内のカリウム総量は、2.9×3.73ℓ≒
               10.8mEq。除水にて16.4−10.8=5.6mEq/L分体外に出されたのであろうか。

               透析中にも、細胞内からKが、補充されたとすれば、もっと多いのかも知れませんが・・・。

               時期が弱冠ずれますが、11月10日(月)も同様な透析をしており、ほぼ同じ数値として考えれば、翌日の11日(火)は、血管中
              のカリウムは、4.4×3.85ℓ=16.94mEqに回復した事になりましょうか。透析後まったく食事も取らず、水分も取っていません。
              所謂空腹状態で、検診に行った訳ですから、体外からのカリウムの補充は、しておりません。

               前日の血管中のカリウム総量は、10.8mEq。翌日午前9時には、採血されました血液からは、カリウムは、16.94mEqとなってお
              りました。その差 16.94−10.8=6.14mEq分が、細胞内から移動したと考えざるを得ません。カリウム量 約0.24g相当分が
              移動してきた事に相成るのでしょう。除去された分が、睡眠中に回復した事になりましょうか。私の場合、いつまでこの状態が維持でき
              るのでありましょう。

               カリウムは、正常値 3.5〜5.1mEq/Lとか。3.5mEq/L以下は、低カリウム血症の範疇に入るとか聞く。透析後は、確かに、いつ
                              も軽度の低カリウム血症状態でありますが、直ぐに細胞内のカリウムが移動し、バランスを取っているのでしょう。
                                透析後の低いカリウム値は、それ程心配する必要がないのでありましょうか。

                               筋細胞内に存在するカリウムは、常に血管内のカリウム値が低位になった時、補充してくれるとしても補充するだけのカリウムが
             存在している場合でありましょう。今後、私の体(筋細胞)にいつまでも補充できるだけのカリウムが存在しえるのでありましょうか。食
             事等で追いつかなくなった場合問題であります。いったい、体内の筋細胞内には、どれだけ存在出来る容量があるのであろうか。

              * 体内総K量は50〜55 mEq/kgとか。詳しくは、http://www.saltscience.or.jp/symposium/2-muto.pdf を参照されたい。
               とすれば、その容量は、平成26年11月10日(月)の体重を77.0Kgと仮定すれば、50×77=3850mEq〜55×77=4235mEq
              の間でありましょうか。ところが、実際は、4.4×3.85ℓ=16.94mEq。これは、体内総カリウム量のほぼ2%相当とすれば、総量
              は、16.94÷0.02=847mEqであり、正常人の総カリウム量と比較すれば、20%強程度の存在としかいえない状況です。
               細胞内のカリウム量を飲料水に使うダム湖の水に例えれば、雨が降らずかなり湖底が見え始めている状況に相当しそうでありましょ
              うか。*

              高カリウム血症は、筋細胞内へもうこれ以上移動できない時に、血液内のカリウム濃度の高い状態が続くのでありましょうか。

               その逆の場合、私は、本当の低カリウム血症症状になり得ます。が、細胞内には、血管中カリウム 約1g相当が存在してる時、
              その1000倍近いカリウムが、貯蔵できるようですが・・。実際平成26年11月時点では、私の場合は、30数倍程度の貯蔵であり
              ましょうか。              

                                カリウム値が後採血で、正常値外になりましたので、栄養士さんには、カリウムを多く含む食品(バナナ等)を聞き、食していますが・・。
             Drからは、止めた方がいいと言われました。カリウムについては、上記の事柄から、後採血のカリウム値が、3mEq/L以下になったとし
             ても杞憂に過ぎないと思うようになりました。

                                 おそらく当院のDrは、http://www.ckd-experts.jp/disease/psychonephrology/condition/06.html の春木先生の文章を読んでみえ
              たからであろうか。

               「肉、魚にカリウムがあるように人間の身体(正確には細胞)にもカリウムが多く存在する。血液中の濃度よりも二桁、三桁も高い濃
              度でカリウムが存在する。血液中は3〜7(高くても)mg/dlである。その100倍、1000倍もの単位のカリウムが細胞内には存在している。
              これが、あたかも堤防が決壊した時のように、血液中に流れ出したら、ひとたまりもない。

               こんなことがどのような場合に起きるのか?維持透析中なら、急激にヤセが起きた時、つまり高熱とか感染症、大きい手術の後、過
              労、うつ状態、夏の暑さで食欲がなかった時、災害で避難所などにいて思うように食事が与えられなかった時であろう。細胞が壊れて中
              から高単位のカリウムがどっと血液中に出てきてしまう。
               これはいい日本語訳がないがカタボリック(catabolic)状態という。この原則でいうと、やせてくる時が「要注意」であり、実質太ってくる
              時(アナボリック:anabolic)はOKである。堤防が決壊しないまでも、いつもギリギリ満水でいる時、つまりカリウム値が高い時に、ちょっと
              でも多くカリウムが入ってくると堤防からついカリウムが溢れることが起きてくる。
               これがカリウムの問題の怖さだと理解しておくことだろう。普段からの適度の栄養ということにつきる。」

               透析前のカリウム値が、3、5mEq以下にならなければ、必要以上のカリウムは、摂取する必要も無いのでしょう。バナナは、
              極たまにしか食さなくしています。が、それ程神経質に生野菜の煮こぼれ液は、捨てるという事もしないで食生活は送れています。

                                                                  平成26年12月7日  記載
                                                                  平成28年3月15日  加筆
                                                                  平成28年6月7日 削除加筆
                                                                  平成28年7月19日訂正加筆
               
                                         
                   

            
                   

inserted by FC2 system